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侍J逆転の布石は“デスパイネ対策”にあり。秋吉=小林「ワンヒットOK」の真意

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で負けなしの5連勝と快進撃を続けている侍ジャパン。14日の対キューバ代表戦で8回に登板し、無失点で切り抜けた“あの男”の活躍が、チームの勝利を後押ししたと言っても過言ではない。

2017/03/15

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気持ちだけでピンチを切り抜けた

 今大会中、小久保裕紀監督に「3、4番に左打者を並べることは相手に左腕の起用を惑わせなくなる」と否定的に訊ねたことがある。その際「左投手が苦手な4番を置いていないから気にしていない」と小久保監督は応えていた。
 
 それは間違いではない。筒香は左投手が苦手ではなく、よく打っている 
 しかし、左の強打者に左投手を当てるのは、抑えるためだけではない。ホームランが二塁打になり、二塁打が単打になり、単打が内野ゴロ、内野ゴロが三振になる。そんな効果も、左打者対左投手にはあるのだ。
 
 だから、5回裏の同点は喜べなかった。
 5回裏、1死二、三塁の好機にチームで最も信頼されている青木・筒香、そして、今大会に入って好調の中田で同点に終わってしまった。6回裏にも小林に適時打がでたものの、先頭打者本塁打の山田がまさかの三振ゲッツーで勝ち越せなかった。
 
 同点で迎えた8回表・裏の攻防がこの試合を分ける。
 デスパイネと対峙する、このイニングに起きることの怖さは、それまでのキューバの戦い方から非常に危険であることは明らかだった。
 
 しかし、このとき、マウンドに上がった2年連続70試合登板の変則右腕と、今大会のラッキーボーイのバッテリーは実に冷静だった。
 
 8回表1死を取ってデスパイネを迎えた時、しっかりとした割り切りができていた。
 
 ラッキーボーイ・小林が対デスパイネをこう振り返る。
 
「(1試合を通して)デスパイネにはヒットは打たれると思っていたので、一発だけは打たれないようにと思っていました。(デスパイネは)インサイドに投げ切ればホームランがないので、そこは思い切って攻めましょうと投手には伝えていました。8回の場面は、ワンヒットOKで、ロングと一番ダメなのがホームランというのを秋吉(亮)さんと話していて、しっかり攻められたと思います」
 
 デスパイネには、セカンド後方に落ちるシングルヒットを浴びたが、バッテリーの勝利といってよかった。
 
 秋吉が同調する。
 
「(8回のデスパイネは)甘い所に投げたら一発があるし、同点の場面で1点もあげられなかったんで、ホームランを打たれないようにだけしっかり意識しました。ヒットを打たれても次の打者を抑えれば1点が入らない。逆にランナーを出してはいけないと思うとピッチングの幅が狭くなってしまうので、ヒットでもいいという気持ちでいったのが良かったです。低めを突いていくこととインコースを使うこと、しっかり投げ切れたのが良かった」
 
 キューバはデスパイネの後にも強打者を用意していたが、秋吉はストレートで詰まらせ、右翼フライ、後続も打ち取りピンチを摘みとった。
 
 改めてすごい男だと思う。
 秋吉のことだ。
 死闘となった2日前のオランダ戦では7回2死から一発が出れば逆転を喫するところで登板。相手打者がチームメイトのバレンティンを迎えるという場面でも、この日と同じように、インコースのストレートと外の変化球をうまく使い、ピンチを切り抜けていた。
 
「ああいうしびれる場面で使ってもらっているので期待に応えないといけないと思っていました。気持ちだけです。こういう場面を抑えると自信につながると思うし、次につなげていけたらと思います。このまま全勝でいって、米国に行きたいと思います」
 
 終盤のひと山となった8回表を、秋吉が抑えた。
 そして8回裏、内川聖一(ソフトバンク)の犠牲フライで勝ち越し、山田のダメ押し2点本塁打が飛び出した。
 
 勝利を振り返ると、同点に追いついた青木、筒香の打撃、6回裏の小林の適時打、8回の内川の決勝犠飛と山田の本塁打、どれも貴重だった。値千金だった。
 
 すべてがなければ、今日の試合は勝つことはできなかっただろう。
 
 だが、もし、サッカーのように選手の採点やマンオブザマッチ(MOM)付けさせてもらえるなら……。
 
 この変則右腕の男・秋吉にチーム最高の7.0を付け、MOMに選定するだろう。
 それほど、秋吉のピッチングがもたらしたものは大きかった。

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