侍Jは決勝Rで足を使うべき? チーム唯一のメジャーリーガー・青木が語る「いい流れになる」要素とは
15日に第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)決勝ラウンド進出を決めた侍ジャパン。準決勝からは米国に場所を移して戦うが、ここからは、長打とどれだけ足を使えるかが重要となってくる。
2017/03/17
「打ち勝つ野球」で1次、2次R突破
三塁ベース上で悔しげな表情を見せる鈴木誠也(広島)をみて、侍Jの決勝ラウンドでの戦いに必要なものを見た気がした。
米国行きを決めたイスラエル戦の6回裏、1死・一、二塁でのことだ。
4番・筒香嘉智(DeNA)による値千金の先制本塁打で勢いに乗った侍ジャパンはさらに攻撃を仕掛けた。5番・内川聖一(ソフトバンク)が四球で出塁すると、6番・坂本勇人(巨人)が中前安打で続いて無死・一、三塁の好機を作る。7番・鈴木は三塁ゴロに倒れ、3塁走者の内川は併殺を防ぐために飛び出してタッチアウト。1死・一、二塁となったが、ここで8番・松田宣浩(ソフトバンク)が左翼フェンスに届く二塁打を放ったのだ。
二塁走者の坂本は当然ホームイン。このとき、猛烈な勢いで二塁ベースを蹴っていたのが一塁走者の鈴木だった。彼の姿勢からは本塁を狙っていることが分かったが、三塁ベースコーチャーの大西崇之氏がストップをかけると、鈴木は急ブレーキをかけた。
その刹那、鈴木は悔しそうな表情を浮かべたのだった。
「ぼくは行く気だったんです」と振り返ったが、その判断は決して間違いではない。東京ドームをホームグラウンドに持つ大西コーチは「ここの特性は、ホームグラウンドでいつも三塁ベースコーチに立っている僕が1番分かっている」と語るよう、無理をしてはいけないなかでの判断だ。その後の攻撃で、相手のミスなども重なって3点を追加しているから、大西の判断は賢明だっただろう。
「好走塁と暴走は紙一重」と言われる。
一番重要なことは、先の塁を狙う意識があるかどうかだ。
これからの戦いを考えると、相手投手のレベルが上がること、戦いの舞台が東京ドームより広いドジャー・スタジアムに移ることを鑑みれば、侍Jがやるべきことは明らかだ。どれだけ足を使えるかに尽きる。
大会に入る前、侍ジャパンのメンバー構成を懐疑的に見えていた。
小久保裕紀監督は「投手力を中心にして少ないチャンスで得点を挙げて守りにいく野球をする」とメンバー発表の記者会見で力強く語った。しかし、指揮官の言葉とは裏腹な中・長距離ヒッターを並べた構成には首をかしげざるを得なかったからだ。
会見では「メンバーを見る限り、今大会は(過去に優勝したときに実践した)スモールベースボールではなく、世界に打ち勝つ野球をするのか」と筆者は質問したが、小久保監督には一蹴された。「打ち勝つ野球をするつもりはない」とのことだった。
大会には行ってみると、侍ジャパンは打ち勝った。
救援陣の安定感は他国より光ったが、今大会の侍ジャパンは「足」よりも「打」だった。「投」よりも「打」が目立っていたことは否めないだろう。
だから、決勝ラウンドも打ち勝つ野球を目指すべきだというつもりはない。
「打」を大切にしながら、これまで以上に足を使った攻撃をすべきだと思っている。
なぜなら、東京ラウンドではスモールベースボールではないとはいえ、日本らしい、足を使った攻撃を仕掛けることができる要素を見せた選手が数人いたからだ。対戦相手のおおよそがクイックの遅い投手ばかりで対戦相手に恵まれたところはあったのは事実だが、要所でレベルの高い走塁を見せた。
田中広輔(広島)、秋山翔吾(西武)、山田哲人(ヤクルト)、鈴木誠也(広島)だ。
田中は中国戦の2盗塁に加え、状況判断の好走塁、秋山はオランダ戦の1点リードの緊迫した場面で盗塁を決めた。山田と鈴木はイスラエルの先発・ゼイドのクイックが速かったにも関わらず、そこを掻い潜った。