WBCで全敗、台湾野球なぜ弱体化? 合わない収支と天下り、悲しき“公務員野球”の末路
WBCで全敗に終わった台湾代表。野球強豪国であるはずが、まったく元気なく敗れた背景には何があるのか。日本とソウル、両方の会場で取材した台湾人記者は現状を嘆いている。そこには試合以前の問題は存在していた。台湾野球の弱体化を招いた分裂騒動を追う。
2017/03/20
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機能しない協会。謎の収支報告と天下りの温床
協会には否定的な目が向けられることが多く、その1つが予算だ。協会は民間組織のため政府の直接的な管理下にないにもかかわらず、政府から「野球補助金」が与えられており、予算が一体どのような使われ方をされているのか明らかになっていなかった。
この3年、協会の予算を見れば、台湾スポーツ界で最も高く、1億台湾ドル(約3.7億円)を超えた。協会はアマチュア野球の発展に寄与する義務があるにもかかわらず、例えば学生野球などアマチュア野球の基盤は全く発展されなかった。一体予算はどこに消えているのか、ファンだけではなく、国会議員が指摘したこともある。
今回のWBCも、協会が「情報収集」という名目で500万台湾ドル(約1850万円)を編成すると明言したが、結局初戦のイスラエルには15対7と大敗。「情報収集したならなぜこんなに結果になるのか?」、ファンは怒りの声をネットでぶつけている。
第2試合のオランダ戦の8回表、まだリードしていた台湾は、左ピッチャーの倪福徳を中継ぎとして登板させるも、ヤンキースの左バッター、ディーディー・グレゴリアス内野手に追加点を許し、同点にされた。
データで見れば、グレゴリウスは左ピッチャーとの対戦成績は3割2分4厘、右ピッチャーのそれは2割5分8厘。左ピッチャーが得意だったのだ。「情報収集したなら、倪福徳を投入することはしないだろう」「YouTubeで動画を見ただけでは」、ファンからの疑惑は止まらない。
協会が収支の明細を公表しても、数字的な整合性がとれない場合が多く、理事長は「資金運用について詳しくは知らない」と不思議な発言を繰り返す。実は、台湾の野球協会だけではなく、他のスポーツ協会(サッカー、テニスなど)の資金運用も透明ではなく、まるで「収支不明」の状況ばかり。
理事長は野球に対してあまり関心がない様子で、ただの肩書きだけ得て、気まぐれで仕事するような状態。台湾は昔から国民党が2000年まで統治しており、定年退職の政治家の多くのは各スポーツ協会に配属された。日本で言う天下りだ。その悪循環は、民進党へと政権交代しても変わらず、旧国民党系の政治家は、まだスポーツ界の「協会」をコントロールしている。