「日本人は自分たちで余白を消していく」。ドミニカアカデミー指導者が語る“真の”選手ファーストとは【ドミニカ野球奮闘記#5】
2019/12/16
高橋康光
ドミニカの指導者は「教えない」ではなく「教えられない」
次に指導という点についてですが、確かにドミニカでは“強く投げる”“思い切り振る”といったことが重視され、指導者もあまり教えるということはしません。そして、日本では“教えないこと=自由、のびのび、個性を伸ばす”と受け止められている印象があります。
ただ、僕に言わせれば、こちらの指導者は教えない、というより細かい基礎的な部分を教えられないのだと思います。結局、指導者自身も教わって来なかったからでしょう。完成されたプロであれば教える必要はなくても、育成年代では教えなければいけないこともあります。
例えば、甲子園の一大会で何百球も投げる投手が話題にされます。その良し悪しはここでは別として、それだけ投げられるということはキチンとしたフォームが出来ているからだろうというのが僕の意見です。同じことをドミニカの子がやれば間違いなく壊れると思います。“強く投げろ”“思い切り振れ”ということをさせるのは確かに大事ですが、それを重んじるばかりにキチンと指導することが軽く見られているという印象があります。
僕も中学時代はピッチャーでしたが、ケガをしないフォーム作りのために、足の上げ方や、グローブの使い方など細かい指導を受けました。MLBアカデミーに入る前段階で、こういう指導を目にする機会はほぼありませんでした。なので、キチンと教えてあげていればもっと伸びただろうという子もたくさん見てきました。