「日本人は自分たちで余白を消していく」。ドミニカアカデミー指導者が語る“真の”選手ファーストとは【ドミニカ野球奮闘記#5】
2019/12/16
高橋康光
ドミニカの萎縮させない環境づくりは見習うべきところ
ドミニカの育成環境について少しネガティブな点も指摘しましたが、もちろんいい点もたくさんあります。特に守備についてですが、ミスはしてもいい、委縮させる環境を作らないという文化は素晴らしいと思います。
日本だと敬遠されがちな逆シングルのようなプレーにしても、様々なシチュエーションに慣れるという意味でよしとされます。またドミニカ人の子はエラーをしても“俺のせいじゃない”と思えるメンタルを持っています。
日本では、暴投に怒られたことがきっかけでイップスになる子もいますし、このあたりは国民性や教育も関係していると思います。ミスをした後のポジティブな声掛けは日本でももっと大事にしていけばいいのではと思います。概してラテンの人たちは自分たちで余白を生み出そうとするのに対し、日本人は自分たちで余白を消していくようなイメージがあります」
経済的、地理的にMLBの影響を強く受けているドミニカでは、野球は日本以上にビジネスライクな部分があるようだ。そして、若者の将来の選択肢が日本より限られているという同国の社会背景や国民性、教育といった様々な要因が重なり、現在のドミニカの選手育成の姿が形作られている。ドミニカを知る藤田さんの示唆に富む意見は非常に貴重なものだ。
「日本の指導もドミニカの指導も一長一短です。最近ではドミニカに来る日本人の方も多いですが、ドミニカの指導は素晴らしいという先入観をもってやってくる方もいます。もちろん間違ってはいませんが、同時に疑問も感じて欲しいです。そして日本人のポテンシャルをもっと伸ばせるよい指導法というのを考えていけたらいいと思います。僕も将来的にはこちらでの体験を日本野球界のために還元したいと思っています」と語る藤田さんの今後の活動にも引き続き注目したい。
高橋康光
藤田さんの活動の様子