MLB投球効率の良い投手は、アは田中将大、ナは超ベテラン、バートロ・コローン【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】
ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はMLB選手の投球効率についてだ。
2016/11/28
Getty Images
効率の良い投球スタイルを進化させた田中
投手成績の重要なファクト「投球効率」。NPBより19試合も多い162試合を消化するMLBでは、投球効率はさらに重要視される。
今季のア、ナ両リーグの規定投球回数以上の投手の投球数と効率を見ていこう。
P/IPは1イニングあたりの投球数。BB9は、9イニングあたりの与四球数、SO9は9イニングあたりの奪三振数。P/FBは打者1人あたりの投球数。
まずはアリーグだ。
最も投球効率が良かったのは、ニューヨーク・ヤンキースの田中将大だ。先発投手の合格ラインと言われる15を大きく下回る14.70。
田中はNPB時代の2012年には奪三振王に輝いた。NPBを代表するパワーピッチャーの一人だった。三振を取りに行くパワーピッチャーはどうしても球数がかさみがちだが、田中はNPB時代からP/IPが14台と低かった。
肘に不安が残る中、持ち前の効率の良い投球に磨きをかけ、今季は初めて規定投球回数に到達。サイ・ヤング賞候補にも選出された。
2位は、クリーブランド・インディアンスのエース、コリー・クレバーだ。ワールドシリーズ進出に大きく貢献。
そして3位には岩隈久志がつけている。彼も15球以内だが、本人にとってはそれほど良い数字ではない。過去3年間のP/IPは、2013年14.12、2014年14.20、2015年14.40。規定投球回数に達した2013年と14年はともにリーグ1位だっただけに、14.98は悪い数字だ。
勝ち星こそ増えているものの、防御率が4.12と悪化したのは、投球効率が悪くなったことと大いに関連する。
岩隈は打者1人あたりの球数の数値P/BFで見れば、3.57でリーグ1位、それでいてP/IPが悪化したのは、安打を打たれすぎたということだ。セイバーメトリクスでは被安打は実力ではなく運の所産という説もあるが、一般的には球威が落ちている、あるいは制球が甘くなったとみることができよう。
奪三振王のデトロイト・タイガース、ジャスティン・バーランダーのP/IPは16.11、しかもリーグ2位の227.2回を投げた。バーランダーの投球数は2013年が3692球、14年が3409球、15年は故障で戦線離脱し2150球だったが、今年は復活し3668球。
3000球を投げる投手が1人いるかどうかというNPBのスケールでは測れない破天荒な投手だと言えよう。