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日本人内野手はなぜ、MLBで通用しない? 野球界に求められるジュニア世代からの育成改革【元ドジャーススカウト、小島圭市の禅根夢標】

読売ジャイアンツなどでプレーし、その後ロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして当時、黒田博樹投手や齋藤隆投手の入団に携わった小島圭市氏の連載。小島氏は現在、(株)K’sLabを立ち上げ、スポーツ環境の向上から青少年の育成に積極的に関わっています。今回のテーマは、「昨今、MLBでは苦悩が続いている日本人内野手」について。過去に数多くの選手が挑戦していますが、成功と言える成果を残せたのは、井口資仁選手(千葉ロッテ)くらいではないでしょうか。日本では首位打者や盗塁王のタイトルなどを獲れているのに、MLBでは通用しない。その要因はどこにあるのでしょうか。また、日本人からスーパースターは生まれないのでしょうか?

2014/10/27

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指導者は〝教える〟ではなく〝考えさせる〟指導を

 今は、どのスポーツも、ひとつの競技をやらせる傾向にあります。人間の身体が成長する前に細かな技術を教え、強制するから個性的なプレーヤーが出なくなっていくのです。
 
 盆栽といったらいいんでしょうか。無駄な枝葉も、時には必要だと思うのです。
 練習では、指導者は細かく言わないことが重要です。
 
 イップスである選手を無理矢理に直そうとしますよね。ひじを上げろとか、こうやって投げてみろ、もっと下げろ、手首が寝てるぞとか……。細かいところを言えば言うほど、選手は戸惑い、迷う。それがイップスを引き起こします。そうではなく、好きなように投げればいいのです。
 
 いかにプレッシャーがない環境でプレーさせることができるかどうか。それが指導者の役割です。
 そこに虫がいて、イップスである選手に「虫に石をぶつけてみな」といったら、イップスにならないんです。気持ちがそっちに向いているからです。「そうやって投げればいいんだよ」っていってあげればいい。
 
 遊びでイップスになる人はいません。
 つまり、リラックスした状態を作る。指導者そういう方向でいいと思うのです。
 
 ノックに関しても、教える必要はありません。
 例えば、赤ん坊にボールを転がしてみると、捕球動作に入ります。そこから始まるんです。最初は、足で止めたっていい。そこから、投げるという動作が加わってきたときに、足で止めていたら遅いからどうやって投げるか。
 
 教える必要はありません。
 むしろ、考えさせることが必要なのです。
 
 赤ちゃんに歩き方を教えないですよね? 好きなようにやって取るのが、個性的な捕り方になる。それなのに、早い段階から「こうやって捕れ」と指導するから、選手は下手になっていくのです。
 
 バッティングも同じです。
 姿勢をちゃんと大事にしなくちゃいけませんが、打ちたいと思う気持ちが強い選手ほど、試合でも、バッティング練習でも崩れていきます。なぜなら、欲が入るからです。
 
 欲が入ると、正しい動きになりません。欲を抑えて、来た球を打つということを教えてやることが大事なのです。
 もちろん練習の中では、よい癖や習慣をつけさせるプロセスはありますが、バッターボックスに立ったら「来た球を打て」、でいいのです。
 
 練習の中で自然とでき始めたら、技術が身につき始めていきます。指導者は、その瞬間を見逃しちゃいけないのです。
 
 そして、繰り返しになりますが身体が出来上がっていないうちにあれこれというのではなく、まずは、強い身体を作っていくことです。
 
 そんな時に選手に声を掛けてあげられる指導者が、良い指導者だといえます。
 
「何かつかんだな」と。そうすると、本人は「ちゃんと見てくれている」と感じ始めます。「この人の指導は、間違っていない」「でも、我慢が必要だ」「毎日、続けなきゃできていないことだった」――そこがわかって初めて、自分で努力し始める。それを小・中学校でやるべきことなんです。
 
 日本人は勤勉だといいます。しかし興味を持ったものに関して、自分はこれをやるって思ったら、世界中、どこの国の人だって夢中になるのです。
 日本はみんなを勤勉にさせようとしていますが、そうではなく、本人の気持ちが向く環境をつくることで、それが結果的に、力を身につけ始めるのです。
 
 環境を整えられれば、日本人でも内野手のスーパースターが生まれると思います。
 
小島圭市 (2)
 
元ロサンゼルスドジャース 日本担当スカウト
小島圭市(こじま・けいいち)
 
1968年7月1日、神奈川県生まれ。東海大高輪台を卒業後の86年、ドラフト外で巨人に入団。 92年にプロ初勝利を挙げるなど、3勝をマークした。その後は故障に泣かされ、94年のオフに 巨人から戦力外通告。巨人在籍中の怪我の影響で1年浪人のあと、96年テキサスレンジャーズとマイナー契約。1年間、マイナーリーグで活躍 した。翌年に日本球界に復帰し中日ドラゴンズでプレー。その後は、台湾の興農ブルズなどで活躍し、現役を引退した。01年日本担当スカウトに就任。石井一久、黒田博樹(ヤンキース)、斎藤隆(楽天)の獲得に尽力。三人が活躍したことから、スカウトとしての腕前を評価された。2013年にスカウトを退職。現在はジュニア育成のため、全国の小・中学生の指導者へ向けた講演会活動や少年野球教室を展開。2014年には会社「K’sLab」を設立。その活動を深く追求している

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