なぜ「カープ女子」は増えたのか。背景にローカリズムの変容とマツダスタジアムの聖地化【経営学から見たカープ】
近年、各球団は女性ファンの動員を増やすべく、さまざまなイベントを行ったり、特典をつけている。その発端はカープ女子だ。今も勢いは増すばかりだが、その背景に何があるのだろうか?
2016/02/22
レジャーとしてマツダへ足を運ぶ
社会情勢も都市部ではなく、地方に目を向けられている。洗練されたものではなく、あえて田舎臭いものを新鮮だと感じる。また、それを応援していく楽しみがあるのだろう。そのような現状をみても「カープにハマっていく」ことは理解できる。
そして、その本拠地であるマツダスタジアムは、ボールパークとして確固たる地位を築いている。神宮や東京ドームで応援しているファンは、「いつかあの素晴らしい球場で試合を見てみたい」とファンにとって聖地化されていったのではないか。
ゆえに、球団が意図して作ったものではなく、ファンコミュニティから生まれた現象ではないか。このファンコミュニティの現象を敏感にとらえ、グッズなどでうまくカープ球団の戦略に取り込んでいったのが、今日までの動きではないか。
マツダスタジアムのコンセプトは「三世代が楽しめるボールパーク」だ。
いわゆるファミリー層をメインターゲットにしており、若い女性に特化しているわけではない(ファン層が広がったとも言える)。
むしろ、その若い女性層に早くから力を入れていたのは、パリーグの球団であり、ソフトバンク、日本ハム、楽天はファンクラブの約半分は女性会員と言われている。
事例として、ソフトバンクは2006年から「女子高生デー」というイベントを開催し、2014年から「タカガールデー」として当日の入場者は約7割が女性というイベントになっている。また、タカガール専用サイトもオープンさせ、女性層へのファンサービスを手厚くしている。
カープもグッズのラインナップを見れば、女性向けも増えた一方で、そこに特化しているわけではない。ここにもう一つ興味深いデータがある。2013年に旅行雑誌において、1球団単独で初めてカープ版が出版された。
売れ行きは好評で、その後はソフトバンクや日本ハム、楽天なども制作された。しかし、第2弾が制作されたのはカープだけである。
売り上げの傾向をみると、首都圏を中心に、関西圏でもよく売れたそうだ。これらを見ても、ファンが広島だけでなく首都圏を中心に全国に点在し、ファンがカープをレジャーだと捉え、ツーリストになっているともいえる。
もちろん広島県内の若い女性ファンも多く、一概には言えないが、このブームの現象の分析として、広島県外、特に首都圏の女性ファンの動向は大きく影響したのではないだろうか。