ホークス上林誠知、長い不調のトンネルを抜けて――憧れの“イチロー”を目指し進化を誓う
去年、“プロ初本塁打が逆転満塁弾”という鮮烈なデビューを飾ったホークスの上林誠知。プロ3年目は開幕一軍という目標を果たせないばかりか、長い不調のトンネルが待ち受けていた。
2016/06/23
憧れの選手に感化されて
高校時代からプレーでの喜怒哀楽はあまり表に出さないようにしていたという上林。
「ホームラン打った時はさすがに喜べよって思われるんで」と、高校2年秋の神宮大会で満塁弾を放った際に見せた笑顔を指摘すると、そう表情を緩め、20歳らしさもにじませた。「でも、やっぱりイメージは崩したくないっすね(笑)」と自らの描く野球選手像に強いこだわりを持っていた。
そんなポーカーフェイスを掲げる上林が、人前で感情を露わにしたのだ。そして、しばらく悔しさを露骨に表す日々が続いた。
「しっくりこない」と新たなフォームを模索する日々。試合前も後も、ひたすらバットを振り続けた。夜、自分の部屋の鏡の前でも、バッティングの構えをしていた。四六時中、頭の中は“打つこと”ばかり……。
長いトンネルにようやく光が射したのは4月1日、ウエスタンリーグ・オリックス戦だった。第2打席、ボテボテの内野安打だったが、30打席ぶりにやっと“結果”が出た。
第4打席では、3ラン本塁打を放った。
結果が出たことに一安心しつつも、「まだまだっす」と繰り返す。「まだ握りがしっくりこないから、打席でいろいろ試している。もう少しで完成しそう。取り戻せそう……」
絶不調は抜け出したものの、結果にはまだ波があった。4月中には固めたいと考えていたフォームも、なかなか完成形にはたどり着かない。
なぜ新たなフォームを模索するのか。これまでのフォームではだめなのか?
脳裏に浮かぶのは、上林が憧れている選手、イチロー(マーリンズ)の存在だ。
「イチローさんだって、毎年変わってるんで」