打撃不振に陥った中島卓也が見せた、「ファウルで粘る」スタイルからの進化【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#38】
夏場の猛追で一気に優勝争いに絡んでいる北海道日本ハムファイターズ。その反動が今、疲れとなって出ている。中島卓也もその一人だが、スタイル転換のいいきっかけになるかもしれない。
2016/09/18
窮屈なバッティングからの変化
で、今週のコラムだが、オリックス22回戦について書かせていただく。1勝2敗の「1勝」の試合だ。勝った試合だけ取り上げるのは、大本営発表みたいで気が引けるけど、やっぱりねぇ、ペナントレースもここまで来ると、ネガティブなことを書いてもしょうがない。ここで猛省を促したりしても、誰も聞いてないでしょ。こうなったらやり切るしかないんだなぁ。僕らもやり切れる選手かどうかを見ている。
つまり、残り試合の「アップデートなし」を前提に僕がペナントレース終盤戦を見ていたと思ってください。そうしたら中島卓也がアップデートしていた! 僕は新聞コラム等で広言している通り、中島卓也のファンではあるけど、今季はこれ以上ないだろうと踏んでいた。失礼しました。彼は「ファウルで粘る中島卓也」を更新したのだ。
「ファウルで粘る中島卓也」は今季、全国区になったと思う。交流戦等のとき、いつも僕は「よく知らないパ」を語る敵地の実況アナ、解説者に大変注目しているのだが、「ファウルで粘る中島卓也」は今年、圧倒的に認知された。が、実は夏場くらいから本人は苦しんでいたのだ。打撃不振だ。僕は世間的に認知された「ファウルで粘る中島卓也」スタイルが、逆に本人を自縄自縛に陥らせている感じがした。
2ストライクに追い込まれてもファウルで粘って、投手を根負けさせて四球を選ぶ。好球を待ってあざやかな流し打ちを決める。中島の打席はいつも面白い。ただその至芸が消極的なほうに出てしまうと、「いつも追い込まれて窮屈なバッティングをしてる人」だ。
で、僕は何人かのファイターズOBをつかまえて、中島のバッティングをどう思うか尋ねてまわったのだった。森本稀哲が面白いことを言った。
「中島は選球眼自体はそんなによくないでしょ。四球も人が思うほど取れてないです。あのスタイルで売れちゃったから変えるのは簡単じゃないと思うんですけど、早いカウントから思い切り振るのも必要ですよ。ガツンっていう一発がないと四球も取れません。スランプに苦しんでる今が、変わるチャンスじゃないですかねぇ」
その言葉を聞いて以来、中島の打席に変化を兆しを探すようになった。で、オリックス22回戦だ。一般的には大谷翔平が日本最速164キロを投じ、それを糸井が打ち返したことで記憶される試合。決勝打のヒーローは中島卓也だった。7回裏2死1、2塁のチャンスで、好投・西勇輝からライトオーバーの2塁打をつ。これが1ボールからの2球目だったのだ。「早いカウントから思い切り振り抜く」だ。録画を何度見直しても、これはたまたまそうなったのではなく、決めていたバッテイングだ。あぁ、ブレークスルーの瞬間を見たなぁと思ったのだ。中島卓也は自らの技術をアップデートした。考えて考えて、自らのスタイルを乗り越えたんだね。
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