ヤクルトに漂う暗黒時代の危険性。口先だけの「一大改革」、止まらぬ“ヤ戦病院化”
東京ヤクルトスワローズは7月9日試合終了時点で、首位と21.5ゲーム差のセ・リーグ最下位だ。その主な理由に、近年悩まされ続けている主力の故障があるのは間違いない。選手たちの意識も問題ではあるが、それ以上にチーム全体の管理体制にメスを入れないことにはどうにもならないだろう。
2017/07/10
一向に減らない主力の故障
ここまで来ると事態は相当に深刻化していると言わざるを得ない。リーグ最下位に沈み込む東京ヤクルトスワローズの惨状だ。7日に神宮球場で行われた広島東洋カープ戦では5点をリードしながら9回に6点を奪われ、悪夢の逆転負け。先発から守護神に配置転換となった4番手の小川泰弘投手が首位カープ打線に滅多打ちにされ、最後の最後で試合をキレイに引っ繰り返されてしまった。
そして翌8日も石川雅規ら投手陣がカープ打線につかまり、11安打8失点で大敗。さらには9日も3点リードを守り切れず、3-2で迎えた9回にはまたしても小川が新井貴浩に同点打を浴び、まさかのドロー。9日ぶりの白星とはならず、チームは7連敗のまま。借金も21で5位・巨人とのゲーム差も6と依然として開きがあり、どん尻で完全な置いてけぼり状態となっている。この3連戦の試合後、毎夜のごとく本拠地スタンドから「やる気があるのか」「金返せ」などと嵐のような怒号が飛び交ったのも無理はない。
それにしても何でこんなに弱いのか。多々ある理由の中から最大の要因として挙げられるのは言うまでもなく、主力にケガ人が続出していることだ。左足肉離れの畠山和洋、腰椎椎間板ヘルニアの川端慎吾、右有鉤骨骨折の雄平、左肩違和感の大引啓次ら主力野手が戦線離脱中で守護神の秋吉亮も右肩甲下筋の肉離れを引き起こし、一軍復帰は今季絶望となってしまった。
しかも今季ここまでケガによって登録抹消となり、一時的に戦列を離れていたメンバーは他にもいる。7日、9日の試合でまさかの背信投球となった小川も左内腹斜筋の肉離れから2軍調整を経て復帰したばかり。右太もも裏内側の肉離れを引き起こしていたウラディミール・バレンティンや、下半身の故障で約2カ月間も離脱していた先発右腕・山中浩史、右大腿(だいたい)骨の骨挫傷を患っていた正捕手・中村悠平、自打球で左ひざを打撲した控え捕手の西田明央もチームに穴を空けた末、ようやく復帰を果たした。
おびただしい数の主力が故障者リストに名を連ね、出入りを繰り返しているのだから「野戦病院」ならぬ「ヤ戦病院」と揶揄されても仕方がない。試合中のプレーによるアクシデントで負傷してしまった雄平や中村、西田はまだやむを得ないとしても、これだけ主力にケガが頻発するとチームが機能しなくなるのも当然の成り行きだ。
ちなみに今季だけでなく近年のヤクルトには毎年のように故障者を多く抱え込む負の歴史がある。先月21日に都内で行われたヤクルトの第65回定時株主総会および球団の臨時株主総会では冒頭から低迷中のチームに関する質問が集中。出席した株主の一人からは止まらぬ「ヤ戦病院化」に怒りをにじませながら「なぜ、何千万ももらっている主力や海外から来た助っ人が2軍にいるのか」と球団幹部、本社上層部へ向けて厳しい追求を向ける一幕もあった。
これに対して衣笠剛球団社長は「本当に多い。ただ2011、12、13年の辺りのケガ人が実は一番多かったが(今は)人数が減って来ている。ただケガ人の人数は減っていても主力選手が目立つ。コンディショニングサポートグループを見直しし、一大改革を行ってリハビリ部門も一つにまとめ上げ、情報の共有化を図っている。トレーナーの資質も高めた。これら(の流れ)は将来に向けても押し進めたい」などとコメントしていた。しかしながらこの場で衣笠球団社長が述べた「一大改革」については大変申し訳ないが、現状でまったくと言っていい程、チーム内において浸透しておらず空回りしているとしか評しようがない。