セイバーメトリクスで考える17年ベストオーダー。一発勝負の最強布陣は?<セ・リーグ編>
熱戦が繰り広げられた日本シリーズが終わり、2017年も野球のシーズンの幕が閉じた。最優秀選手(MVP)やベストナイン、ゴールデン・グラブ賞といった記者投票による表彰選手が発表される。それに先立ち、記者の視点とは異なる、今シーズン残された数多くの記録を組み合わせた総合的な評価からベストオーダーを考えてみることにする。まずはセントラル・リーグから検討していこう。
2017/11/08
DELTA
先発は菅野とマイコラスの一騎打ち。最後にベストオーダーを検討
投手の選考はバックの守備の影響を受けない、投手の能力が色濃く反映される数値と、それを用いて投手の総合的な貢献を計る数値を使って評価していこう。
守備の影響を受けないK%(奪三振割合)、BB%(与四球割合)、打球に占めるゴロの割合で見ていくと、先発投手は巨人の菅野智之とマイルズ・マイコラスの2人に絞られる。だが各要素がほぼ同じような数値であるため、この評価法で2人の間に優劣をつけるのは非常に難しい。
救援投手で活躍を見せたのはDeNAの山崎康晃と阪神のラファエル・ドリスだ。高いK%とゴロ割合が光る。これらの数字ではどちらの投球内容も素晴らしく優劣をつけるのは難しいが、ここでは「より重要な場面での投球」に重みをつけて評価するWPA(Win Probability Added)という指標で比べてみる。WPAでは2.13と0.13と山崎とドリスの間に差があり、山崎のほうが勝負どころでの登板、好投が多かった様子が見て取れる。今回は山崎康を救援部門のベストピッチャーとしたい。
セカンド、ショート、外野の1枠、先発投手で1人を選ぶのが難しい状況になった。どのポジションも候補として名前を挙げた選手であれば誰をベストとしてもおかしくない。判断する上でポイントとなるのは「細く・長く働いた選手」と「太く・短く働いた選手」どちらを評価するかだ(もちろん“細く”や“短く”というのは比較する上での例えである)。
ここでは1つの考え方として「NPBの代表チームとして、ある1試合に勝つためのベストオーダー」と考え、「太く短く」働いた選手も積極的に選んでベストオーダーとしてみよう。判断が難しかったショートの候補、坂本と田中であれば少ない打席数で同等の働きを見せた坂本を、外野では桑原や筒香ではなく松山を、二塁では山田や菊池の半分以下の打席でトップクラスの打撃貢献を積み上げた、マギーを選出することとする。
シーズン中盤に規定打席に達し、突如首位打者争いのトップに立った打者が、その後一気に打率を落としていくケースのように、マギーや松山や坂本が競争相手と同じだけの機会を得たとして、それまでと同じ質の働きを見せられたかはわからない。今回の選び方は、質を保つ可能性に期待した1つの形として受け取っていただきたい。
先発投手も2度少ない先発登板でマイコラスとほぼ同じイニングを投げた菅野を選んだ。なお、1、2番に出塁力に長けた強打者を優先的に置く、セイバーメトリクスで提唱されることの多い形に則った打順も、一案として挙げておく。
1中堅 丸 佳浩(広島)
2右翼 鈴木 誠也(広島)
3二塁 ケーシー・マギー(巨人)
4左翼 松山 竜平(広島)
5一塁 ホセ・ロペス(DeNA)
6三塁 宮崎 敏郎(DeNA)
7遊撃 坂本 勇人(巨人)
8捕手 會澤 翼(広島)
9先発 菅野 智之(巨人)
9救援 山崎 康晃(DeNA)
野手の評価方法を知る
※野手の評価について
今回のベストオーダーの検討では、打撃に関してはwRAA(weighted Runs Above Average)を、守備についてはUZR(Ultimate Zone Rating)を用いている。
wRAAは、打撃を出塁力と長打力の両面から評価して、得点をつくり出す上でどれだけ働きを見せたかを評価した数字で、基準(ゼロ)を平均的な打者が同じだけ打席に立ったときの働きに置いたもの。それに対しどれだけ差を積み上げたかを示している。今回は走塁や本拠地球場の性質などは考慮していない。
UZRは、打球をいかにアウトにしたかをベースに、失策の数、また外野手は走者の進塁をいかに阻んだか、内野手は併殺をどの程度完成させたかも考慮している。キャッチャーについては、盗塁抑止と捕逸の少なさ、その他の失策の少なさで評価しており、リードやフレーミング(ストライクゾーンの際のボールのキャッチング技術)などは考慮していない。
投手については本文にて説明した通り、投球回と奪三振、与四球、ゴロ割合という失点を減らす上で重要な要素と、それらを使って算出する総合指標WAR(Wins Above Replacement・先発投手の場合)とWPA(救援投手の場合)を用いた。