広島の独走の理由とは? 自滅のヤクルトと世代交代できぬ巨人の迷走…2017セ総括【小宮山悟の眼】
まもなく1年が終わろうとしている。今年もたくさんのことがあったシーズンだったが、今季の両リーグを総括してみたい。まずはセ・リーグからだ。
2017/12/19
戦力が充実していた広島、来季は混戦の予感
優勝した広島は戦力が充実していた。先発陣は黒田博樹が抜けた穴をきっちりカバーしていた。一人が台頭するのではなく、チームとして戦力を整えているからだろう。さらに鈴木誠也が4番打者として一本立ちしたのも大きい。
今季のキャンプは、前年に「日本シリーズに負けた」という悔しさが前面に出ている練習だった。だからペナントレースは間違いなく勝つという予想はできたが、これほどの独走態勢を築いたのは、選手の能力の高さに加え、「勝つ集団」になっているからだろう。
しかし、今季はCSファイナルで敗退した。これが前年と同じように「悔しさ」に変わるかは難しい所だ。2年続けてペナントレースを制覇した満足感もある。CS敗退の悔しさとリーグ連覇の喜びが混在する。これを天秤にかけたとき、ペナントは獲ったけど、「CSで負けちゃった」とあっさり受け止めていると隙が出る。
今季は差が開いてしまったが、来季は混戦になると予想する。
ヤクルトはヘッドコーチに宮本慎也が入って、チームはかなりピリッとしていると聞く。広島から石井琢朗と河田雄祐が入閣し、上手く循環すれば今年のようにはならないだろう。中日はドラフトで2人の即戦力を獲得できたのが大きい。2、3年後に期待ができる未来への希望が持てるシーズンになるだろう。
巨人は若手にただチャンスを与えるだけで終わらないでほしい。キャリアというのは積めば積むほどプラスになり、若い選手はチャンスを与えることで劇的によくなる。これまでの巨人の若手はチャンスをもらったが、モノにできずにマイナスを引っ提げてファームに戻っていた。何かを掴むまで我慢して起用すべきだろう。村田を切ってポジションを空けた。若手にキャリアと積ませてほしい。
いずれにしても、下位チームが奮闘して最後まで競り合うようなペナントにしてもらいたい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。