【日本Sを読み解く】ソフトBが連覇達成 セ・パの違い攻守に如実…甲斐の盗塁阻止100%で実った一丸の取り組み
「SMBC日本シリーズ2018」第6戦が3日、マツダスタジアムで行われ、パシフィック・リーグ2位からクライマックスシリーズ(CS)を制した福岡ソフトバンクホークスが、セントラル・リーグ3連覇を果たした広島東洋カープを2-0で破り、シリーズ4勝1敗1分けとして2年連続9度目の日本一に輝いた。シリーズ最終戦となったこの試合を分けた、攻守の勝負のポイントはどこにあったのだろうか。
2018/11/04
バンデンの「速・遅」多彩なクイックで翻弄
一方、マウンド上でのバンデンハークはきめ細やかだった。
2点をリードした5、6回にそれぞれ出塁を許したが、速・遅のクイックを織り交ぜ、投球までの間を使い分け、牽制もしつこく投げた。
バンデンハークは言う。
「シーズン中からクイックなどについてはずっと取り組んでいたんだ。それがシーズンの最後になって上手くできるようになった。これからも取り組んでいきたいと思うが、うまくいったのは拓也がいたからだ。彼のおかげで余裕を持つことができたからね」
バンデンハークが上手いと思ったのは、そのクイックが全投球において速くなかったことだ。
ストップウオッチで計測していると分かるのだが、1.5秒台という、盗塁を贈呈するかのような下手なクイックも少なくなかったのである。
このカラクリがチームとしての企図数8回を全て刺すことができた要因の一つであろう。
バンデンハークが続ける。
「誰が一塁ベースにいるのか。カウントはどうなのか。状況判断をしてクイックについては使い分けがうまくできたと思う」
遅いクイックを混ぜることによって走者に油断をさせておいて、いざ盗塁を仕掛けてきた時にはバンデンハークが平均値ほどのクイックで投げ、甲斐が正確無比なボールをセカンドへと送っていたのだ。
CSファイナルステージで敗退した、埼玉西武ライオンズの金子侑司外野手がこんな話をしている。
「バンデンハークのクイックは、僕が想像していたものと全然違った。映像で何回も確認したんですけど、シーズン中とは違って、スタートを切れなかったんです」
もちろん、その背景にはシーズン終盤戦において、リーグトップの盗塁数を誇る西武が、1試合4盗塁死を喫したということもあるのだが、チームとしての盗塁を刺すための取り組みがあったことに他ならない。
若田部健一ピッチングコーチは言う。
「バンデンハークのような手足の長い投手は、どうしても動きが遅くなってしまう。それは仕方のないことなので、少しでも速くすることや投球の間を変えるという努力をしてきた。日本シリーズで広島と対戦することまでを想定してきたわけではありませんが、パ・リーグには西武や日本ハムなど走ってくるチームが多い。その対策が日本シリーズでも実ったのかもしれません」