侍ジャパン、準決勝の先発は千賀でいくべき。武器のフォークは無限の可能性【小宮山悟の眼】
第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の2次ラウンド・プールEは15日に最終戦を迎え、侍ジャパンがイスラエルを下し、3連勝で決勝ラウンド進出を決めた。敗れればプレーオフ突入という緊迫した試合であったが、先発の千賀滉大投手の好投、筒香嘉智外野手の本塁打で流れを掴んで見事にものにした。21日(日本時間22日)に迎える準決勝へ向け、世界一奪還を目指す侍ジャパンは強豪相手にどのような戦い方が有効となるのだろうか。
2017/03/17
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準決勝で千賀と菅野を登板させる策も
そんな準決勝だが、今大会の千賀の活躍で準決勝に誰を先発させるかといういい意味での悩みが生じてきた。昨日の試合を見ると、千賀を準決勝のマウンドに上げたくなるというのが本音だ。
様々な考え方がある。例えば、優勝するためには決勝戦で勝たないといけない。だから、勝てる確率が高いと感じる投手を決勝戦に残しておく。一方で、日本人的な発想になるが、後先を考えずにまず準決勝を取りに行くという考え方もある。先に勝てる確率が高い方を選択するということだ。
ただ、今大会はトーナメントの一発勝負になるから、準決勝を勝たないと決勝がないという感覚に日本人はなるだろう。世界一になることが目標なら、勝つ確率が高い選手を決勝に置いておくべきなのだが、私も日本人的発想なので、準決勝は千賀が先発と考える方だ。
もちろん、菅野の意地に期待するところはある。彼は日本でトップレベルの投手だから、前回登板での悔しさをもって好投してくれるだろうと。しかし、今回の場合は相手のレベルが相当に高い。いま、MLBで活躍している日本人投手たちが抑えにかかっても、難しい相手だというのを頭に入れておかないといけない。
千賀と菅野を同日に使うという策もあり得なくもない。2次Rのサンディエゴラウンドの初戦で、プエルトリコが前回大会の決勝戦の雪辱を果たし、ドミニカに勝利した。このままだとドミニカが2位で上がってくる可能性が出てきた。つまり、準決勝で侍Jと当たるかもしれないのだ。
ドミニカの打線はオールスター級だ。マチャド(オリオールズ)、カノ(マリナーズ)バティスタ(ブルージェイズ)、クルーズ(マリナーズ)など豪華な選手が居並ぶ打線は強力だ。彼らをどう抑え込むかと考えるより、どう次にバトンを渡すかを考えたほうが得策かもしれない。菅野→千賀にするのか、千賀→菅野にするのかは分からないが、翌日の登板を考えて球数30球のリミットを守りながら投手陣全員をつぎ込んでもいい。
千賀は、夢を与えてくれる選手だ。ご存知のように、彼は育成ドラフト4位で入団した選手。将来の可能性を秘める選手が、そのポテンシャルを生かす土壌があるチームに行けば、これだけの選手になれるということを証明している。さらに、決勝Rの舞台で活躍すれば、彼は語り継がれる選手になる。
バッターではロッテの角中勝也が独立リーグからロッテに入団。首位打者まで上り詰めた。彼も前回大会のWBCに出場している。彼らのような存在は野球を志している子どもたちが日本代表でプレーしたいという想いを持ち続けたら、どこかで可能性があるということを伝えてくれている。
攻撃面に関しては、ホームランが出るのは筒香くらいだろう。戦い方としては、機動力を活かしていくことになるはずだ。細かい野球をすれば勝ち目はある。向こうの選手たちは基本ができていて、個々の能力は高い。しかし、細かい野球への対応がそれほどできるわけではない。細かい野球を経験していないからだ。
個人の能力勝負になってしまうと戦いは厳しくなるが、複雑なことをやっていくと、綻びが出てくるはずだ。日本人はそれこそ、野球のレベルが高くなってくる高校生くらいから緻密な野球を叩き込まれているのだ。
決勝Rでは日本の野球の質の高さを証明してほしい。遠くに飛ばす、速い球を投げるという点では敵わないかもしれないものの、9イニングをこなすなかで、攻守両面においてそつのない細かさでは世界で一番であるはずだ。その質の高い野球を存分に発揮してもらいたい。
小宮山悟(こみやま・さとる)
1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。